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4 多段土壌層法の汚水浄化特性とその適用
増永二之 佐藤邦明 若月利之 島根大学生物資源科学部
近畿大学農学部

1.多段土壌層法とは?
  土壌は長年、主に家庭排水を中心とした生活系排水の処理に利用されてきており、家庭排水の個別処理や、窒素・リンなどの高度処理、放流先のない場所での敷地内処理等などに利用されている。土壌はその物理・化学・生物的な特性により、ろ過・吸着・分解など高度な浄化機能を有し、また地球上のほとんどの地域に存在する非常に有用な資源である。しかし、その特性および浄化機能は土壌の種類に大きく依存し、また土壌の水浸透能が汚水処理の律速要因となることから、その利用には制限がある。
 多段土壌層法は、土壌の持つ浄化機構を制御し、土壌の有する高度処理能を維持しながら、従来の土壌処理法に比べて、高負荷量での処理を可能にする方法である。土壌の持つ浄化機能および多段土壌層法による浄化機能の強化・制御の要点は次の通りである。(1)透水性が高く粒径の揃った資材を充填した通水層と浄化機能を強化した混合土壌層をレンガ積層状に多段に配置した構造(図1)にして透水性を強化する(高速処理機能の強化)。

図1 多段土壌層装置構造

図1 多段土壌層装置構造

(2)自然土壌にそなわっている浄化機能を活性炭/木炭、金属鉄、おが屑などの資材を加えることによって強化する。また通水層の材料にゼオライトや軽石、木炭などを用いることによっても装置の浄化機能を強化できる(高度処理機能の強化)。(3)送気の有無により装置内の嫌気/好気条件の制御を行う(処理機能の制御)。
 本法の開発研究は著者だけでなく国や地方自治体の公的機関の支援および、多くの民間企業や海外の機関との連携の基になされてきたものである。

2.多段土壌層装置の汚水浄化特性
  表1に対象汚水の質と装置への負荷量と浄化能を3タイプにまとめて表す。

表1 多段土壌層法により過去に処理対象とした汚水の質および装置への負荷量と浄化能
表1 多段土壌層法により過去に処理対象とした汚水の質および装置への負荷量と浄化能

BOD処理
 原水中のBODや装置への絶対負荷量が変化してもほとんどの装置・条件で除去率80?90%を示し、また土壌や混合する資材の違いによるBOD浄化能の変動は小さい。水負荷量が、2000L/m3・日を超えるとBOD除去率は低下する傾向にある。しかし、水負荷量が2000L/m3・日未満であれば、低BODの高速処理でも高BODの低速処理でも除去率は同レベルである。SSやCODも同様の浄化特性を示す。
窒素処理
 低濃度から高濃度までT-Nの除去率は多くの装置で40?70%の範囲である。アンモニア態窒素の除去についてはいずれの装置・処理条件でも問題はない。家庭・トイレ排水処理等で、T-N負荷量が3?20g/m3・日程度の場合、水量負荷が500から2000l/m3・日へ増加するにつれ処理水中のT-N濃度は低くなった。つまり、T-N負荷量(濃度×水負荷量の積)が同じ場合、T-N濃度が低い排水を大きい水負荷量で処理(高速処理)の方が、除去能力が高くなった。装置内での窒素の動態には汚水中の有機物と窒素の比率(COD/T-Nなど)と、装置内の酸化・還元状態が関与し、T-N除去に影響を及ぼす。脱窒に不適な有機物/窒素比率を有する汚水の場合、有機資材や金属鉄の添加により装置内の酸化・還元状態を制御し窒素除去能を強化することができる。
リン処理
 装置や汚水負荷の条件により平均除去率は44?88%と変化し、汚水中のT-P濃度の高い方が浄化効率が高い傾向にある。土の重量に対して約5?10%の金属鉄を添加することによりリン浄化能は大幅に向上でき、高速処理においても除去率を90%まで高めることができる。添加された金属鉄は土壌層内で二価鉄に酸化あるいはキレート化され可溶化して好気的な通水層へ流出し、そこで酸化されゼオライトや軽石などの資材表面で不溶性の水酸化鉄の錆の被膜を形成し効率的にリンの吸着ができる。
 送気は、装置内を好気的に維持し有機物分解・硝化・鉄の酸化を通じてBOD、窒素、リン処理に寄与する。ただし、窒素処理については、過剰な送気は硝酸の流出を生じT-N除去能の低下を招くため、対象とする汚水の水質を考慮して適切な送気条件を検討する必要がある。

3.多段土壌層法の現場への適用
  本法の開発について、時代の流れと共に様々な汚水タイプの処理への適応を目指し研究を進めてきた。これまでに家庭排水、食堂・トイレ排水、畜産排水、ゴルフ場の排水のような農薬等の化学物質を含む排水処理、地下水の硝酸やヒ素汚染浄化、汚濁河川水処理、下水の高度処理などを対象に種々の実験および現場での実証試験を行い、それらの成果を基にして公共施設のトイレや河川処理施設などに多段土壌層による水処理装置が導入されている。写真1は2005年に稼働を開始した福岡県の河川処理施設であり、前処理など付帯設備を含めた施設総面積は2500m2程度で1日の水処理量は7000m3である。海外においても、タイではカセツァート大学と連携し食堂・トイレ排水処理、インドネシアでは西スマトラ州のアンダラス大学とパダン産業貿易規格化研究所と連携してヤシ油精油・ゴム精製・豆腐製造工場などからの産業排水処理、アメリカではハワイ大学と連携して畜産廃水処理について、各国での実用を目指して現地資材を用いた研究を行っている。

 
写真1 福岡県の河川所英施設(完成後)
(完成後)
写真1 福岡県の河川所英施設(施工中)
(施工中)
写真1 福岡県の河川所英施設

 

 本法の詳細については、筆者等の研究グループの最近のいくつかの文献をリストアップするのでそちらを参照されたい。

(参考文献)
・Sato, K., Masunaga, T., and Wakatsuki, T. Water movement characteristics in a multi-soil-layering system, Soil Sci. Plant Nutr., 51(1), 75-82(2005)
・Sato, K., Masunaga, T., and Wakatsuki, T. Characterization of treatment processes and mechanisms of COD, phosphorous and nitrogen removal in a multi-soil-layering system.,Soil Sci. Plant Nutr., 51(2), 213-221(2005)
・佐藤邦明、増永二之、稲田郷、田中利幸、新井剛典、海野修司、若月利之 多段土壌層法による汚濁河川の直接浄化を目的とした高速処理技術の開発,日本土壌肥料学会誌,76(4), 449-458(2005)
・Masunaga, T., Sato, K., Zennami, T., Fujii, S. and Wakatsuki, T.: Direct treatment of polluted river water by the Multi-Soil-Layering method,J. of Water Env. Tech., 1(1), 97-104(2003)
・Boonsook P., Luanmanee S., Attanandana T., Kamidouzono A., Masunaga T. and Wakatsuki T.: A comparative study of permeable layer materials and aeration regime on efficiency of multi-soil-layering system for domestic wastewater treatment in Thailand,Soil Sci. Plant Nutr., 49(6), 873-882(2003)
・海野修司、若月利之、増永二之*、伊与田勝己 多段土壌層法による河川の直接浄化および水質浄化特性に関する研究,土木学会論文集, 726, 121-129(2003)
・増永二之、佐藤邦明、若月利之:多段土壌層法によるシマジン,フェニトロチオン,ナプロパミド,テトラクロロエチレンの除去に関する研究,水環境学会誌,25(6) 361-366(2002)
・Sato K., Masunaga T., Inada K., Tanaka T., Arai Y., Unno S. and Wakatsuki T.The development of high speed treatment of polluted river water by the multi-soil-layering method, Examination of various materials and structure, Jpn J. Soil Sci. Plant Nutr., 76(4), 449-458(2005)(in Japanese with English abstract)
・Unno S, Wakatsuki T, Masunaga T and Iyota KStudy on direct treatment of river by multi-soil-layering method and its characteristics of water purification. J. Jpn. Coc. Civil Eng., 726/II-62, 121-129, (2003) (in Japanese with English summary)
・Masunaga T, Sato K and Wakatsuki T, Removal of Simazin, Fenitrothion, Napropamid and tetrachloroethylene by Multi-Soil-Layering Method. J. Jpn Soc. Water Env., 25, 361-366, (2002)(in Japanese with English abstract)


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