CDM の動向および日本の取り組み
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CDM の動向および日本の取り組み

東北大学 明日香壽川

 1997 年の京都での気候変動枠組条約第三回締約国会議(COP3)の際に「偉大な驚き(great surprise)」と呼ばれたのが、途上国における温室効果ガス排出削減プロジェクトを先進国が支援し、その見返りとして排出削減量をクレジットという形で獲得して自国の削減目標達成に活用するクリーン開発メカニズム(CDM)である。本稿では、このCDM の現状、特にクレジットの需給、価格、プロジェクトの種類、そして日本政府および日本企業の取り組みなどを紹介すると同時に、制度としての課題や評価について述べる。

クレジット需給
 現在(2008 年10 月)、すでに約1000 件以上のCDM 案件が国連の審査に合格して登録されており、2012 年までに発行予想量は12 億t-CO2 を超えるとされる。さらに、登録が確実な潜在的案件数もクレジット発行量も約2 倍以上あるとされている。
 本格的に案件開発や国連登録が始まる前の2006 年頃までは、京都クレジット全体では供給が需要を上回るものの、CDM からのCER( CDM によって認証された排出削減量)供給量が需要量に対してかなり小さくなる、というのが一般的な見方であった。その後、2007 年になってCDM 案件登録数が大幅に増加し、米国とカナダが買い手から抜けたこともあってCER の供給も、当初想定されていたほど少ないものではないのでは、という認識が広まった。
 しかし、2008 年になってCDM 理事会の審査が厳しくなったことなどが影響してCER供給量は落ちている。したがって、京都議定書第一約束期間が終わる2012 年あるいは2013 年における最終的な需給関係に関する予測は非常に難しい。

価 格
 CDM プロジェクトが登録されるようになった2005 年時点では、CER は4? 8US$/t-CO2 程度で取引される一方で、EU ETS( EU 域内排出量取引市場)で取引されるクレジットであるEU 割当量(EUA)は20 US$/t-CO2 以上の値をつけていた。その後、この乖離は小さくなりつつあり、CER 価格自体が上昇しつつある。2008 年10 月現在、市場関係者によると、リスクフリーのCER クレジットの価格は20? 30US$/t-CO2 程度で取引されている。
 最近の傾向だが、供給量の拡大にしたがって2008 年に入ってから多少価格が下がり気味になったものの、2008 年後半になると前述のようにCDM 理事会の審査が厳しくなったこともあって、再び価格は上昇しつつある。しかし、京都議定書で甘い削減目標が課されたために割当排出量(AAU)の余剰分を多く抱え込むロシアおよび中東欧諸国が、何らかの形でAAU を市場に出せばCER 価格は大きく値崩れする可能性もある(図1)。
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プロジェクトの種類
 CDM プロジェクトが登録されるようになった2005 年頃には、フロン破壊やメタン回収などの総投資コストが小さくて削減量が大きなプロジェクトが多かった。しかし、そのようなうまみのあるプロジェクトが一通り開拓され尽くした現在では、再生可能エネルギーや省エネ案件が増えている。また、2007 年後半から、小型水力ダム案件が急増している。一方、植林や森林管理などの、いわゆる吸収源プロジェクトは、方法論が確立されていないなどの理由によって案件数は非常に少ない。

日本の取り組み
 日本は、義務的な国内排出量取引制度がないため、企業が海外から積極的にクレジットを買うインセンティブがEU 企業に比べて小さかった。しかし、2007 年から政府による買い入れも始まり、2008 年10 月からは、排出量取引制度の施行も始まる。
 一部の経団連企業の自主行動計画目標達成が困難になっており、今後、政府も企業(特に鉄鋼会社と電力会社)も積極的な買い手になると予想される。最終的には、産業界の購入量は、少なくとも2?3 億トン規模に達する見込みであり、これらは目標未達分として政府に無償で提供される。
 ただし、現在、市場が懸念しているのは日本発のクレジット暴落シナリオ、すなわち、日本政府や日本企業がAAU を安値で購入し、持っている大量のCER を市場に放出するというようなシナリオである(クレジットのフィルタリングと呼ばれる)。
 一般的に、日本においても国際社会全体においても、ホット・エアー(‘まがい物’という意味の英単語)と呼ばれるAAU に対するアレルギーはまだ強い。しかし、今後このようなシナリオが発生する確率は、少なくともゼロではないと思われる。

制度としての評価
 先進国側の一部には、CDM はアメとムチのアメだけしかない制度であって不満がある。一方、CDM 案件が少ない途上国は、不公平だと主張する。持続可能な発展に資する案件が少ないという批判もある。
 このように多くの課題を持つものの、すべての関係者を満足するような制度というのは現実的にはあり得ない(売り手である途上国の中にも、買い手である先進国の中にも、それぞれいろいろな意見や立場がある)。すなわち、完璧なプロジェクトや制度というのは、そもそも存在しないという認識は必要であろう。
 筆者は、技術および資金を移転するメカニズムとして画期的な仕組みだと考える。なぜなら、これまで先進国のスローガンでしかない場合が多かった技術および資金の移転を、先進国が京都議定書目標を達成するための半義務的な制度として確立したからである。国際社会もCDM に対しては一定の評価を与えており、2012 年以降においても何らかの形でCDM という制度は継続されるというのが多くの関係者の見方である。

筆者補足:CER 予想供給量が需要総量に近い数字だとしても、CER が市場にすぐに出回るとは限らない。また、カナダ、米国からの需要も、個人や企業の自主的なカーボン・オフセット用のクレジットとして多少はある(日本の需要がより大きくなる可能性もある)。さらに、供給側が、実質的なカルテルを形成して、価格をつり上げようとすることも考えられる。なお、この図は日本の経産省が作成したものであり、市場へのシグナル発信という戦略的な意味もある。

出所:Ministry of Economy, Trade and Industry, Government of Japan “Supply
and Demand of Kyoto Mechanism” , Dec. 2007.__


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