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3 温暖化問題における途上国の役割
-クリーン開発メカニズムとマルチ・ステージ・アプローチ-
明日香壽川 東北大学

1.クリーン開発メカニズムの課題

 京都議定書には、CDMの目的として、1)ホスト国(途上国)の持続可能な発展を達成、2)コスト効率的に温室効果ガスの排出量を減少、の二つが挙げられている。しかし、この二つの目的が同時に存在していることが、CDMが制度として限界を持つ状況を招いており、多くの人がCDMに対して不満を持つ根本的な原因となっている。なぜならば、二つはトレードオフの関係にあるからである。

  すなわち、買い手となる多くの先進国、特に多くの企業にとっては価格が(低いことが)最も重要であり、持続可能な発展指標はただの「お題目」と考えている場合が少なくない。一方、ホスト国側も、持続可能な発展に資する、すなわち副次的メリットを多く持つようなプロジェクトを実施したいと思っているものの、ライバル国(他の途上国)との価格競争に負けてCDMプロジェクト誘致に失敗したら元も子もないというのが担当者の本音である。

  しかし、商品が一様ではなく、供給側が差別戦略をとることが可能であれば、大きさはわからないものの、いわゆるプレミアム市場が存在してもおかしくない。日本企業と欧米企業を対象にしてクレジットの質に関して筆者がアンケート調査を行ったところ、回答者の多くは、GHGクレジット購入の際、品質を考慮し、それは価格差に現れると認識していることが分かった。欧米企業に対するアンケート調査では、具体的な支払い意志額も訊ねたところ、汎用性などに対して高いプレミアム(1ユーロ/二酸化炭素トン程度)がつく可能性があることがわかった。実際に、環境NGOであるWWF(自然保護基金)は、ゴールド・スタンダードという独自のクレジット評価の基準(事業のタイプ、追加性とベースライン、持続可能な開発)を設置しており、すでにいくつかの取引が行われている。

2.途上国参加問題

 京都議定書を「米国や途上国が入ってないから欠陥品である」とする批判する声があるが、これは十分な知識を持たない一般の人々を結果的に欺く「うそ」である。特に、「現時点で途上国にも温室効果ガスの排出削減を義務づけるべき」というのは、以下のような3つの理由で極めて理不尽でアンフェアな要求だと思われる。

 第一は、人口の大きさの無視である。たしかに、多くの排出量予測モデル計算が、途上国(非付属書I国)全体の排出量は2030年?2050年の間には先進国(付属書I国)全体の排出量を超えるとしている。しかし、これをもって、特に米国や日本が中国やインドを名指しで批判するのは、仙台人が東京人に対して、「東京は仙台の10倍もの排出をしていてけしからん」と言っているのと同じである

 第二は、一人あたりの排出量の大きさの無視である。実際には、途上国は人口が10倍でもアウトプットはもっと小さい。なぜならば、一人あたりでは、先進国に住む人々は途上国に住む人々の数倍の温室効果ガスを出しているからである。人口増加中の途上国の人々に対して現時点で削減義務を課するのは、「電気を使ってない人間は永遠に電気を使うな」と命令することに等しいのである

  第三は、加害と被害の関係の無視である。IPCC(気候変動における政府間パネル)などの科学的知見によると、洪水や干ばつなど、温暖化によってより大きな被害を直接的に受けるのは、南に位置し、頑強なインフラ、災害保険、他の地域へ逃げる術、そして食料価格上昇に対応できる経済的余裕のすべてを持たない途上国に住む人々である。

  筆者は、将来枠組みの骨格として、一人あたり排出量と一人あたりの所得を指標にして、すべての国に対して段階的なコミットメントの義務づけが最も公平かつ合理的だと考える。これは、マルチ・ステージ・アプローチとよばれる考え方であり、多くの研究者、NGO、そしてEU政府が出している枠組み案の基本的な骨格となっている。

3.今後の課題

 国際社会は、日本がクレジットの大口の買い手となると考えている。逆に供給の方は、CO2関連のJI/CDMからの供給量は、需要を満たすためにはかなり不十分であることが明らかになりつつある。したがって、ストレートに言えば、日本の京都議定書数値目標遵守は、中国からのHFC(フロン)案件およびロシアからのAAU取引に大幅に依存せざるを得ない状況にある。

  いずれにしろ、議定書数値目標を守るという意味でも、2013年以降の枠組みを決めるという意味でも、初めてのMOP(議定書批准国会議)が開催される今年は非常に重要な年である。京都議定書に関して、日本にとって考えられる最悪シナリオは、「議定書数値目標が遵守できない」あるいは「日本政府がロシア政府と表と裏で取引して何とか辻褄を合わせる」というものであり、国際社会にとっての最悪シナリオは「(2013年以降に関して)2008年になっても何も決まらない」というものである。「最悪のシナリオはなぜか必ず起こる」というマーフィーの法則が今回は当てはまらないことをただ祈るのみである。


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